Dr.ナターシャによる心臓に関する本(イントロ)
私たちには、皆、心臓の病気のある、あるいは心臓の病で亡くなった知り合いや家族がいることでしょう。心臓病は現代の疫病です。人気のマスコミから見聞きし、医者に行くたびに、友達や近隣での話の中に、そして、食べ物を買う時も、四六時中そのことについて耳にしています。まるで、いつもの雑音のようなので、「ちょっと待てよ」と立ち止まり、一体この心臓病とは何で、私が心配しないといけないことかな?と考えたりしないのです。
心臓病と一口でいっても、様々なものがあり、リューマチ熱、先天性心臓欠損、感染症、腫瘍、心筋疾患、損傷、薬物その他毒からの損傷、遺伝性疾患、心不全などがあります。ただ、人々が「心臓病」と言うとき、たいてい冠動脈性心疾患を意味します。なぜなら、それが西洋社会の死因ナンバーワンで、先進国では、冠動脈性心疾患で人口の3分の1が死ぬからです。心臓の問題のある大部分の人はこの問題を持っています。CHD(冠動脈性心疾患)が原因の死亡は最近15年で幾分減少したにもかかわらず、この病気にかかる人の数はやはり増加しています。しかし、20世紀初頭では冠動脈性心疾患はまれであり、医者も実際患者に出会うこともめったになかったため、主要な医学書には載っていませんでした。今日、英国で300万人がこの病気をもち、米国では一日に2500人がこの病で死に、オーストラリアでは、年間5万人が死に、その他の先進国でも似たような数字が見られます。
冠動脈性心疾患は、動脈硬化が原因です。では、動脈硬化とはなんでしょう? それは、動脈壁の病気で、動脈が狭くなり、塞がってしまうというものです。狭窄の原因は動脈の硬化変質と、アテローム斑と呼ばれる、動脈壁の裏地にもりあがった斑点の形成によるものです。その動脈が血液をおくる臓器により、アテローム性動脈硬化のある動脈壁があると、その臓器への血液供給に障害となります。
もっとも影響されやすい臓器についてみていきましょう。
1.心臓に送血する動脈(冠状動脈)における動脈硬化は、もっとも頻度の高い死因である冠動脈性心疾患に至ります。この病気がこの著書のメインテーマです。
2.脳に送る動脈にアテローム性損傷があると、死因第3位(がんに続く)である脳卒中となります。
3.末梢動脈の動脈硬化は、末梢血管疾患となり、筋肉の痛み、四肢冷感、潰瘍、壊疽の症状を伴います。
4.腎臓動脈へのアテローム性損傷は、高血圧と腎臓障害を引き起こします。
5.小腸動脈の動脈硬化は、重篤な上腹部痛と消化異常を引き起こしやすくなり、小腸壊疽にもなりかねません。
いかなる場所で動脈硬化が起こってもその血流が妨げられ、それからその臓器の機能や組織も不全となります。
私たちの死因ナンバーワンの冠動脈性心疾患についてもっとよく見てみましょう。
この病の主だった二つの形は、狭心症と心筋梗塞(心臓麻痺)です。狭心症は、冠状動脈の内腔(内側の空間)が狭くなったけれども、ふさがっていない状態で起こります。それで、その人が心臓を休ませていれば、少しの血液供給ですむので、我慢できます。しかし、その人が肉体活動をし、心筋がより活発化するときは、アテローム性動脈は心筋に血流を十分に送り込むことができません。その結果、胸骨の後ろに、典型的な、しくしくした胸痛が現れ、首や左腕、まれに右腕にまで痛みが及びます。初期段階では、休息により痛みは去ります。病気が進行すると、この人は薬(ニトログリセリンかその他の硝酸塩薬)をのんで動脈を広げ、血流を通すのですが、それで痛みは止まります。
心臓麻痺、つまり心筋梗塞は、冠状動脈が完全につまり、心筋への血液の供給が止まるときに起こります。その結果、そのつまった動脈に供給されていた心臓の部分が死んでしまいます。これは、それまで何の心臓の症状もなかった人にも起こりえますし、何年も狭心症を患った人にも起こります。典型では心臓麻痺の症状は、運動と関係なく重篤な胸痛が起こり、硝酸塩は効きません。痛みは通常極度の恐怖、冷や汗、吐き気とショック状態を伴います。まれに、心臓麻痺は痛みを伴わない場合があります。心臓麻痺がおこると、およそ半分の人は最初の2,3時間で命を落とします。2,3時間で命を落とさなかった人でも、回復までに数週間かかります。この人々も心筋に傷を負い、その後不整脈、心不全、その他の症状を持つようになります。不整脈は、動悸の異常で、心臓の電気伝導システムの障害から起こります。狭心症も梗塞も不整脈へと移行することがあります。
動脈硬化は、何世紀もの間知られてきたもので、ヒポクラテスやガレンもその兆候についてまとめています。レンブラントもその有名な絵画、「老人」で進行した動脈硬化の姿を見事に描いています。皮膚の表面の固く、ひねまがった血管、眼球の虹彩下の黄色い脂肪輪、決行の悪い鼻や頬、黄色板症と呼ばれる、目の周りの脂肪のかたまり、抜け毛や乾燥肌などが現れています。
従来の医学では動脈硬化がなぜ起こるのか、どのように治すのかわかっていません。動脈硬化を発症させると考えられるリスク要因については特定されています。しかし、単なるリスク要因で、病気の原因ではありません。その中には、喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、運動不足、男性であること、動脈系の病気を持つ親族、ストレス、心配性、攻撃的性格などがあります。要因はおよそ200あり、このリストはさらに増え続けています。
しかし、人々がもっとも耳にするのが、コレステロールと食事脂肪についてです。人気のマスコミ、医者、薬剤師、政府、食品産業はこぞってコレステロールと脂肪食が、心臓病と動脈硬化にかかわる病気の「原因」であると言い続けています。天然脂肪と、コレステロールを含む天然食品を食べないように、と言い、植物油とマーガリンを代わりに取るようにと言います。食事から肉と卵を抜き、炭水化物で代用するように言います。大衆の脂肪妄想症を先導し、促進し続けています。
彼らは、私たちの血中コレステロール値を下げるために強力な薬物やその他の手続きを用いています。彼らはコレステロールと脂肪に対して40~50年間戦いを起こしてきました。それなのに、動脈硬化と心臓病のらかん率はやはり着実に伸びています。西洋社会の人々は、「心臓のために健康的な」食事をとり、運動をし、コレステロール薬を飲んでいるのに、以前と同じ数の人が心臓麻痺と脳卒中にかかります。心臓麻痺と脳卒中で死ぬ人の数は、今日ではほんの僅かばかり減りました。これは、救命医療がよりよくなったからです。
しかし、心臓病とその他の動脈硬化の発症は減少の兆しがありません。我々の医療、政府、薬剤産業、食品産業のすべての努力は、なんら違いをもたらしてはいないのです。彼らが数十年前から挑み続けてきた「心臓病に対する戦争」は、敗北です。
それでは、私たちは、何か間違ったことをしているのでしょうか?
この本"Put your Heart in your Mouth"では、動脈硬化とは何か、その真の原因は何なのかを理解しようと努めます。そして、動脈硬化の予防と治療のために、何ができるのか、について、みていきます。しかし、そういったポイントに行きつく前に、いくつかの迷信を晴らす必要があります。その迷信神話は、この社会に深くしみこみ、人々はそれを疑問視することすらしなくなっています。1700年代に、ロバート・ウォルポール卿はこう言いました。「心の草取りをしない人々は、心が草でぼうぼうになってしまう傾向がある。」それでは、ぼうぼうの草を抜いて道をきれいにし、我々の心臓病の大流行の裏に、何があるのかを、はっきりとみていきましょう。
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以上、上記のサイト、イントロ部分の訳です。